入社手続きや取引開始のタイミングで、「誓約書と覚書、どちらを用意すべきか」と迷ったことはありませんか?
書類の名前は似ていますが、誰が署名するか・どんな目的で使うかが根本的に異なります。用途を誤ると、いざというときに文書が機能しないリスクがあります。
この記事では、誓約書と覚書の定義・違い・注意点を整理し、すぐに使えるテンプレートも収録しています。念書・差入書との違いも確認できます。
誓約書と覚書の違いを一覧表で確認する
2つの文書の特徴を表で比較します。
| 項目 | 誓約書(せいやくしょ) | 覚書(おぼえがき) |
|---|---|---|
| 性質 | 一方的な誓約・約束 | 双方の合意内容の確認 |
| 署名者 | 誓約する側のみ | 当事者双方 |
| 典型的な用途 | 秘密保持・競業避止・反社確認など | 契約の補足・修正・合意事項の記録 |
| 作成シーン | 入社時・取引開始時・退職時 | 契約締結後の変更・補足合意 |
| 法的拘束力 | 記載内容・状況による | 記載内容・状況による |
| 印紙税 | 原則不要(内容による) | 内容が契約書に相当する場合は課税 |
一言で表すなら、誓約書は「一方が誓う文書」、覚書は「双方が確認する文書」です。この違いが選択の基準になります。
誓約書(せいやくしょ)とは:一方的な誓いの文書
誓約書とは、作成者(誓約者)が相手方に対して、特定の行動をとること・またはとらないことを約束する文書です。
署名・押印するのは誓約する側のみです。相手方は受領するだけで署名しないのが一般的です。
- 秘密保持誓約書(NDA):業務上知り得た情報を外部に漏らさないことを誓う
- 競業避止誓約書:退職後一定期間・一定地域での競合行為を行わないことを誓う
- 反社会的勢力に関する誓約書:反社勢力との関係がないことを表明・誓う
- 個人情報取扱誓約書:個人情報を適切に管理・取り扱うことを誓う
誓約書が使われる主な場面
- 入社時:秘密保持・個人情報・ハラスメント防止に関する誓約
- 退職時:競業避止・機密情報持ち出し禁止に関する誓約
- 取引開始時:反社確認誓約書、情報セキュリティ誓約書
- プロジェクト参加時:守秘義務誓約書
「誓約書」を使ったビジネス例文
- 「入社に際し、秘密保持誓約書へのご署名をお願いしております。」
- 「退職者には競業避止義務に関する誓約書を提出していただいています。」
- 「取引開始前に、反社会的勢力排除に関する誓約書を差し入れてください。」
- 「個人情報保護誓約書は、業務委託スタッフ全員から取得しています。」
- 「今回の案件では、守秘義務誓約書の締結を条件として情報を開示します。」
覚書(おぼえがき)とは:双方合意の記録文書
覚書とは、当事者双方が合意した内容を記録・確認するための文書です。
契約書の補足や変更内容の記録として使われることが多く、双方が署名・押印するのが基本です。「合意書」や「確認書」と呼ばれることもあります。
- 既存契約の条件変更・期間延長の記録
- 口頭で合意した内容を文書化して証拠として残す
- 本契約締結前の暫定合意事項の記録
- 契約書に定めのない補足事項の確認
覚書が使われる主な場面
- 契約変更:業務委託契約の単価改定・期間延長
- 追加合意:既存契約に含まれない新たなサービス・条件の追加
- 協議結果の記録:交渉の過程で合意した事項を双方確認のために記録
- 取引開始前:本契約締結前のLOI(意向書)代わりに使う場合もある
「覚書」を使ったビジネス例文
- 「契約単価の変更については、別途覚書を締結する予定です。」
- 「業務委託契約の更新にあたり、条件変更を反映した覚書を取り交わしました。」
- 「口頭でご了承いただいた納期延長について、覚書で確認させてください。」
- 「本覚書は、2024年4月1日付け業務委託契約書の一部を変更するものです。」
- 「本契約締結前の合意事項を整理するため、覚書を作成しました。」
誓約書・覚書・念書・差入書の違いを整理する
似た文書が多く、混乱しやすいかもしれませんね。以下の表で4つの違いをまとめました。
| 文書名 | 性質 | 署名者 | 典型的な用途 |
|---|---|---|---|
| 誓約書 | 一方が誓う | 誓約者のみ | 秘密保持・競業避止・反社確認 |
| 覚書 | 双方が合意内容を確認 | 双方 | 契約変更・補足合意の記録 |
| 念書 | 一方が約束・事実を記す | 作成者のみ | トラブル後の約束・謝罪文書 |
| 差入書 | 一方が相手に差し入れる約束書 | 差入人のみ | 取引条件への同意、誓約書の別称としても使用 |
念書・差入書は誓約書と近い性質を持ちます。誓約書との実務上の違いは、誓約書が「約束・誓い」に重点を置くのに対し、念書は「事実の確認・反省の記録」としても使われる点です。
誓約書・覚書に関するよくある間違いと注意点
間違い①:覚書は契約書より効力が弱いと思い込む
覚書に法的拘束力があるかどうかは、文書の名称ではなく記載内容によります。「覚書だから守らなくていい」は誤解です。権利義務を明記した覚書は、契約書と同様に法的拘束力を持ちます。
間違い②:誓約書を双方署名にする
誓約書に会社側も署名してしまうと、双方の合意文書(覚書・契約書)に近い性質になります。誓約書は誓約者のみが署名・押印し、受領者は捺印欄を設けないのが原則です。
間違い③:覚書の印紙税を見落とす
覚書の内容が課税文書(請負契約・売買契約の変更など)に該当する場合、印紙税が課されます。名称が「覚書」であっても課税対象になりますので、内容を確認してください。
間違い④:入社時の誓約書を省略する
口頭での説明だけでは、後日「そのような約束はしていない」というトラブルになりかねません。秘密保持・情報管理・競業避止に関しては、入社時に書面で取得しておくことが実務上の標準です。
コピペして使えるテンプレート:秘密保持誓約書・覚書(基本書式)
テンプレート①:秘密保持誓約書(入社時)
私は、株式会社〇〇(以下「会社」)に入社するにあたり、以下の事項を誓約します。
第1条(秘密情報の定義)
本誓約書における「秘密情報」とは、会社の業務に関する技術上・営業上の情報であって、会社が秘密として管理するものをいいます。
第2条(秘密保持義務)
私は、在職中および退職後においても、秘密情報を第三者に開示・漏洩せず、会社の業務目的以外に利用しないものとします。
第3条(情報の返還)
退職時には、秘密情報を含む資料・データ等を速やかに会社に返還し、自己の手元に保持しません。
第4条(違反時の責任)
本誓約書に違反し会社に損害を与えた場合、損害賠償その他の法的責任を負うことを認識しています。
年 月 日
所属部署:
氏名(自署): 印
テンプレート②:覚書(契約内容変更・基本書式)
株式会社〇〇(以下「甲」)と株式会社△△(以下「乙」)は、
年 月 日付け業務委託契約書(以下「原契約」)の内容について、
以下のとおり合意します。
第1条(変更内容)
原契約第〇条を以下のとおり変更します。
【変更前】
(変更前の条文を記載)
【変更後】
(変更後の条文を記載)
第2条(その他)
本覚書に定めのない事項については、原契約の定めに従うものとします。
本覚書の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙各1通を保有します。
年 月 日
甲:住所
会社名 株式会社〇〇
代表者 代表取締役 〇〇 〇〇 印
乙:住所
会社名 株式会社△△
代表者 代表取締役 △△ △△ 印
誓約書と覚書の違いに関するまとめ
誓約書は一方の当事者が誓う文書で、署名するのは誓約者のみです。
覚書は双方が合意内容を確認・記録する文書で、当事者全員が署名・押印します。
法的拘束力はどちらも記載内容によって生じます。名称だけで効力の有無を判断しないでください。
入社時・取引開始時には誓約書、既存契約の変更・補足合意には覚書を選ぶのが実務の基本です。
