~要綱、~要項、~要領となんか似たような名前のものがありますが、どう違うんだろうと疑問に思うことありませんか?
「要綱」と「要項・要領」には切り分けられるほどの違いがありますが、「要項」と「要領」にはさしたる違いはありません。
そこで今回は、混同しやすい要綱・要項・要領の意味を明らかにして、例文を用いながら具体的に解説していきたいと思います。
要綱・要項・要領の違い
一目で分かりやすいように、一覧表にまとめてみました。
用語 | 意味 | 具体例 |
要綱 | ものごとの根本となる重要な事柄。または、それらをまとめたもの | 委員会設置要綱 補助金交付要綱 開発指導要綱 |
要項 | 必要な事柄。または、それを書き記したもの | 入試要項 試験の募集要項 大会要項 |
要領 | ①ものごとの主要な部分。要点 | 学習指導要領 実施要領 大会要領 |
要綱は、要項や要領に比べてもっと大枠での基本的な考え方をいいます。
なので要綱をみると、何々については「別に定める」として、細かいことについては要綱以外のもので定めていくことが多いですね。
これに対して、要項と要領の違いはあまり意識するはないかと思います。どちらも必要となる事項を細かく定めていく点では同じであって、どちらが一般的に使われるかといった程度の認識でよいでしょう。
例えば、募集要項を募集要領と言っても差し支えありませんが、一般的には募集要項の方が多く使われています。
もう少し詳しくみていきたいと思います。
すべてに共通する「要」の意味
音読みでは「ヨウ」
訓読みでは「かなめ、い(る)」
と読みます。
意味と使い方しては、以下のようになります。
意味 | 使い方 |
①物事の最も大切な事項 | 重要、要点、要所、要綱、要項、要領 |
②必要であること、なくてはならないこと | 必要、不要、要注意 |
③求める | 要求、要請、需要 |
④まとめる | 要約、概要 |
出典:デジタル大辞泉
今回のテーマである「要綱・要項・要領」はすべて①の意味で使われています。
要綱(ようこう)
ものごとの根本となる重要な事柄。また、そのような重要事項をまとめ上げたもの。
出典:大辞林第三版
「綱」の字は
音読みでは「コウ」
訓読みでは「つな」
と読みます。
意味と使い方しては、以下のようになります。
意味 | 使い方 |
①物事を統括する大筋 | 大綱、綱領、要綱 |
②生物学で、大きな区分け | 哺乳綱 |
③ロープ | 綱引き |
④すがって頼みとするもの | 命の綱、頼みの綱 |
出典:デジタル大辞泉
漢字の意味から簡単にいうと、
「要綱」とは、最も重要な事項をまとめたもの
ということができます。
主に役所などの行政機関で使われることが多いですね。
(例文)
- 補助金の申請をされる方は、~補助金交付要綱を参照してください。
- 宅地を大規模開発をされる場合は、市の開発指導要綱を確認してください。
要項(ようこう)
要綱(ようこう)と同じ読み方で混同しやすいのが「要項(ようこう)」です。
必要な事項。また、それを書き記したもの。
出典:大辞林第三版
「項」の字は
音読みでは「コウ」
訓読みでは「うな・うなじ」
と読みます。
意味と使い方しては、以下のようになります。
意味 | 使い方 |
あるまとまりをもつ事柄をさらに細かく分類したものの、一つ一つ。また、それを記述した文章。 | 項目、条項、事項、要項 |
数式を組み立てる要素 | 多項式 |
くびの後ろの部分 | うなじ、えりくび |
出典:デジタル大辞泉
漢字の意味から簡単にいうと、
「要項」とは、必要な事柄を細かく記したもの
ということができます。
「要綱」が大綱的なものに対して、
「要項」は細則的なものです。
要綱>要項
一般的によく耳にするのが、試験の募集要項ですね。
受験する人が知りたいのは、受験資格や試験日、持ち物など受験するのに必要な細かい事項のはずです。
なので、大綱的な募集要綱ではなくて、細かい事項も記載した募集要項とするのが一般的ですね。
(例文)
- 受験資格・試験日・持ち物などは、試験の募集要項をご覧ください。
- マラソン大会に参加する人は、大会要項をよくお読みください。
要領(ようりょう)
前述の「要綱・要項」とは読み方が異なります。
また、2つの異なる意味があるのも特徴です。
① 物事の主要な部分。要点。
② 物事をうまく処理する方法・手段。
出典:大辞林第三版
「領」の字は
音読みでは「リョウ・レイ」
訓読みでは「えり・うなじ」
と読みます。
意味と使い方しては、以下のようになります。
意味 | 使い方 |
重要なところ | 綱領、要領 |
中心になって取り仕切る。また、その者 | 領事、首領、大統領 |
自分のものとして所有し、支配する。また、その場所 | 領有、領域、領土、領海 |
受け取る | 領収 |
首筋、うなじ |
出典:デジタル大辞泉
漢字の意味から簡単にいうと、
「要領」とは、物事の主要な部分を記したもの
ということができます。
「要綱」が大綱的なものに対して、
「要領」は「要項」と同様に細則的なものです。
要綱>要項・要領
有名なのが、文部科学省が出している「学習指導要領」ですね。
文科省が定める教育課程の基準について、細かく書かれています。これをもとに教科書や時間割が決められているわけです。
「要領」のもう一つの意味としては、
うまい処理の仕方(要領がいい)という意味もありますが、今回のテーマとしての要領とは異なります。
(例文)
- 次期学習指導要領では、小学校5年生から英語が正式な教科となります。
- あの人は要領よく仕事をこないていく。
なお、「要項」と「要領」の明確な違いはなく、試験の募集要領と言っても差し支えありません。
まとめ
これまで見てきたように、「要綱」と「要項・要領」の違いが分かれば、「要項」と「要領」は同じようなものだと思ってもらえればよいでしょう。
何かをするにあたりその指針や基準を大綱的に定める場合には「要綱」、細目的(細かく)定める場合は「要項」または「要領」といった使い分けができればOKです。
まずは要綱で大きな指針などを決めて、細かい部分は要項や要領で定めるといったやり方もあれば、要項あるいは要領だけで完結するといったやり方もあります。