岐阜県美濃市には、江戸時代から続く昔ながらの町並みが残されている地区があります。
この町並みは、「うだつの上がる町並み」と呼ばれ、国の伝統的建造物群保存地区に選定されています。
一方、「うだつが上がらない」という言葉を見聞きしたことがあるかと思います。ぱっとしない人に対して、「あの人はうだつが上がらない人だなぁ」といったような使い方をします。
この両方に共通する「うだつ」ってなんでしょうか。「うだつの上がる町並み」と「うだつが上がらない」には関連性はあるのでしょうか。このあたりを説明していきたいと思います。
1.「うだつ」とは
うだつというのは、自分の家と隣の家との間の屋根を一段高くして火災の延焼を防ぐためにつくられた防火壁のことを言います。言葉で説明しても分かりにくいので、まずは下の写真をご覧ください。
写真:美濃市HPより
赤い四角のものがうだつです。手前の屋根に上がっているのもうだつです。
うだつが残っている日本家屋は少なくなっており、岐阜県美濃市をはじめ、徳島県美馬市脇町南町、徳島県つるぎ町貞光など限られた場所でしかうだつの町並みをみることができません。
うだつは、隣接する町屋が火事になった場合、火燃え移るのを防ぐためにつくられたものですが、うだつを上げるにもそれなりの費用がかかるため、比較的裕福な家に限られていたようです。
2.美濃市のうだつの上がる町並み
美濃市は、江戸時代から美濃和紙の製造を中心とした商人の町で、うだつの上がる商家が軒を連ね、古きよき町並みが形成されています。
うだつの上がる町並みの代表的な旧家としては、以下の2軒となります。
小坂家住宅(国指定重要文化財)
写真:美濃市HPより
江戸時代から営まれている造り酒屋で、昭和54年に国の重要文化財に指定されています。3つのうだつをあげた美しい起り(むくり)屋根(傾斜面が膨らんだ屋根)が特徴です。
開館時間 | 9:00-17:00 |
休館 | 無休 |
入館料 | 無料 |
TEL | 0575-33-0682 |
旧今井家住宅・美濃史料館(市指定文化財)
写真:美濃市HPより
江戸中期に建てられて美濃市内最大規模の商家で、平成6年に市の文化財に指定されています。
最も古いうだつ軒飾りと水琴窟が見どころです。
開館時間 | 4月~9月まで 9:00~16:30 10月~3月まで 9:00~16:00 |
休館 | 12・1・2月の毎週火曜日(火曜が祝日の場合は翌日)、祝日の翌日、年末年始 |
入館料 | 大人:300円(中学生以下無料) |
TEL | 0575-33-0682 |
アクセス
電 車 | 長良川鉄道「美濃市駅」から徒歩約10分 |
バ ス | 岐阜バス岐阜美濃線「うだつの町並み通り」下車、徒歩1分 |
乗用車 | 東海北陸自動車道美濃ICから、国道156号経由で約5分 |
駐車場
普通車 | 200台 |
駐車料金 | 協力金として 100円(普通車) |
3.「うだつが上がらない」の意味と語源
上で説明したように、うだつを上げることができるのは比較的裕福な家に限られていました。
そして、どれだけ立派なうだつを上げられるかで自己の財力を誇示していたんですね。
これが転じて、「うだつが上がらない」という慣用句は、「地位が向上しない(出世しない)」、「ぱっとしない」という意味で使われます。
ちなみに、うだつは漢字で「梲」あるいは「卯建つ」と書きます。
まとめ
「うだつが上がらない」という言葉と意味は知っていても、その語源を知らなかった人はこれで理解できたのではないでしょうか。実際に、うだつを見上げながら昔ながらの趣のある町並みを散策するのもこれまたよいものです。
美濃市に行ったときは、「うだつの上がる町並み」がおすすめです。