夏になると、毎年のように海や川での水難事故のニュースがあります。子供を楽しませるために海や川へ連れて行っていったのに、水難事故にあって最悪亡くなってしまうなんてことになったら立ち直れないですよね。
警察庁によると、平成29年の水難事故は、
○発生件数 1,341件(前年対比 -164件)
○水難者 1,614人(前年対比 -128人)
うち、死者・行方不明者 679人(前年対比 -137人)
このうち、子供(中学生以下)は、
○発生件数 144件(前年対比 -18件)
○水難者 206人(前年対比 -11人)
うち、死者・行方不明者 26人(前年対比 -5人)
となっています。(警察庁生活安全局地域課 平成29年における水難の概況より)
海や川へ行く以上、まずは親が水難事故のリスクがあることを十分に認識する必要があります。その上で、そのリスクを少しでも軽減する対策をとって、海や川を楽しみましょう。
海・川のリスクについて説明した上で、親が注意すべき点とその対策についてご紹介しますので、参考にしてみてください。
1.海・川のリスク
まず、海も川も自然の一部であること。プールのような人工物とは異なり、海では波が自然に発生するし、川では流れがあります。時にそれは私たち人間の脅威にさえなるということを覚えておく必要があります。
今日は波がゆるいからちょっと沖まで行ってみよう、今日は流れが穏やかだから子供を連れて川の真ん中あたりまで行ってみようといった油断が足元をすくわれかねません。
平成29年の水難事故による死者・行方不明者679人の発生場所をみると、多い順に、
○海 384人(56.6%)
○河川 174人(25.6%)
行為別にみると、
○魚とり・釣り 219人(32.3%)
○水遊び 61人(9.0%)
子供の死者・行方不明者26人については、半数以上が、
○河川 17人(65.4%)
行為別にみると、約半数が、
○水遊び 12人(46.2%)
となっています。(警察庁生活安全局地域課 平成29年における水難の概況より)
海や川の危険ポイントは後ほど説明しますが、常にリスクを頭に入れつつ、子供の行動をよく観察してあげてください。
2.注意すべき点・対策
① 目を離さない
大勢で行けば行くほど、子供への目がおろそかになります。親戚同士の集まり、友人家族とのバーベキューなど、大勢の人が集まる場所では、子供から目を離している間に、子供が事故に合うケースって本当に多いように思います。
これには2つ理由が考えられます。
①親同士会話に夢中になってしまう(あるいはBBQの準備に忙しい)
②誰かが子供を見ているという思い込んでしまう
特に、2番目の問題が大きいと思います。大勢いれば誰かが見てくれている、そんなことを全員が思い込んでいて、結局誰も見ていなかったとしたら恐ろしいですよね。
大勢で行くときほど、子供から目を離さないようにしましょう。誰が見るのか決めておく、誰が見ているのかしっかりと把握するなど、子供の行動に対して万全の体制をとりましょう。
② しっかりと準備体操
特に川って思っている以上に水温が低いです。プールのように一定の場所に留まっていませんので、いくら暑くてもいきなり入るのはやめましょう。
足がつって溺れる場合も往々にしてあります。
子供には、海・川へ入る前にはしっかりと準備体操をするよう指導しましょう。
③ 水着・ライフジャケット着用
綿の服は水を吸うと重くなります。水遊びのであれば、水着を持っていきましょう。
できればライフジャケットを着用するのが望ましいです。
海や川は急に深くなるところがあります。浅いから大丈夫だと油断していると、思わぬ事態に慌てふためく可能性があります。そんなときライフジャケットがあれば助かる可能性が高くなります。
特に小さな子供には着用させてあげましょう!2,000円以内で買えるものもあります。目立つよう、カラフルなライフジャケットがおすすめです。
④ 水遊び用のシューズ
特に、川は下が石ころなので、藻などが付いていると滑りやすくなっています。
サンダルやクロックスよりも、しっかりかかとまで履けて滑りにくい水遊び用のシューズがいいと思います。サンダルだとよく脱げますので、脱げたサンダルを追いかけて溺れそうになったという経験をしたことがある方もいると思います。川だと結構な速さで流されてしまいますので、脱げたサンダルを追いかけるのは危険を伴います。滑りにくく脱げにくい靴で遊びましょう。
⑤ 危険な場所(遊泳禁止区域)を把握
よく水難事故が起こるのは、遊泳禁止区域です。危険な場所なので遊泳禁止区域に指定されているにもかかわらず、そこに行くのは自殺行為です。
親が率先して連れていくことはもちろんすべきでないし、子供にも遊泳禁止区域には絶対に入らないよう言い聞かせることが大切です。
海では、「離岸流」といって、岸から沖に向かう強い流れが発生することがあります。この離岸流にさらわれると、沖まで押し流されてしまいます。素人ではどれが離岸流かわかりづらいと思いますが、波が割れにくく、濁った色をしていて、ゴミや泡が溜まりやすいといった特徴がありますので、そのような場所には子供を近づかせないことです。
川には突然深くなる「淵」と呼ばれる場所があって、淵の手前では流れが急(早瀬)になることが多いです。また、中洲は増水した場合、水没してしまいますので、中洲でのバーベキューなどは避けた方が無難です。
⑥ 天候に注意
大雨が降ったあとに川へ行くことや、波浪警報や注意報が出ているのに海へ行くことは絶対やめましょう。
行く前にしっかりと天候をチェックし、滞在中も気象情報をチェックするように心がけましょう。
以下のサインが見られたら即刻避難してください。1999年に神奈川県で起きた玄倉川水難事故では、再三の避難勧告を無視した結果、中洲に取り残された18名中、子供4名を含む13人が濁流にのみ込まれ犠牲になりました。
○雨が降り始めたとき
○水かさが増え、川の水が濁ったり、流木や落ち葉が流れてくるとき
○注意報、警報が出たとき
○雷が聞こえたとき
○山鳴りがしたとき→土石流(鉄砲水)のサイン
○川の水かさが急に減ったとき→土石流(鉄砲水)のサイン
⑦ 二次被害の防止
もし子供が溺れた場合、助けるために飛び込み、結果親が亡くなるという事故もよくニュースで報道されています。子供が溺れた場合、親も気が動転して焦った状態で海や川へ飛び込んでしまいます。冷静になる方が難しいですが、事前にそういった事態も想定しておくことで冷静に対応できる場合もあります。
プロのライフセイバーが救助に向かう場合、何も持たずに救助に行くことはないそうです。
子供を抱えて波のある海や流れのある川を泳ぐのは至難の業です。一度プールで子供を抱えたまま泳いでみてください。はっきり言って無理です。自分は泳げるからと言って過信しない方がいいと思います。
救出に向かう際には、浮き輪やロープ(予め準備しておく)を持っていく同時に、即刻レスキューを要請しましょう。できるだけ多くの人に知らせましょう。
まとめ
海や川は、プールに比べて高いリスクが伴います。そして、子供は予想外の行動に出ることがあります。このことをしっかりと頭に入れた上で、子供の安全を第一に考え、事前の準備を怠らないようにすることで水難事故は減らすことができます。
海や川といった自然の中で遊ぶことは、子供の成長にもいい影響を及ぼすと思いますので、楽しく安全に遊ぶためにも是非親が気を付けてあげてください。